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- 第16期研究(令和2年度~令和3年度)
研究テーマ
児童生徒の確かな学びをつなぐカリキュラム・ マネジメントの構築Ⅱ
-「佐大附特システム」の改善と授業実践を通して-
テーマ設定の理由
本校では、前期第15期研究において、学習指導要領の改訂に対応する形で、カリキュラム・マネジメントをテーマの中心として研究に取り組んだ。研究の成果として、本校におけるカリキュラム・マネジメントの捉えを整理し、カリキュラム・マネジメントを進めていくための方式や枠組みとしての、「佐大附特システム」を構築したが、この特システムを研究としての取組から通常の業務へ移行していくために、教師間の共通理解を深め、様式を改訂するなどしてシステムを改善していくことや、児童生徒の確かな学びをつなぐ取組となっているかを検証することが課題となった。
本校は大学附属の特別支援学校として定員が設定され、小規模の学校で、教育課程の類型も各学部1つずつだが、児童生徒の実態は幅広い。そのような幅広い実態の児童生徒集団であっても、学習においては、児童生徒一人ひとりの資質・能力を育成していくことが大切であり、そのためには、適切な目標設定・授業計画・評価・授業改善が必要となる。それは、まさにカリキュラム・マネジメントの取組そのものである。
本校の研究としては、これまで理論研究を踏まえつつ、授業研究や実践研究に中心的に取り組み、教師の指導力の向上を目指してきた。前期研究においても、授業研究を通して育成を目指す資質・能力を明確にした授業作りや、目標設定や評価及び評価の生かし方の検討を行うことができた。
そこで今後は、研究授業だけでなく、日々の授業作りにおいて、児童生徒一人ひとりに育成を目指す資質・能力の明確化を図り、確かな学びをつなぐポイントを整理していくことが必要だと考え、上記研究テーマを設定した。
研究目的
「佐大附特システム」の改善を通して、本校のカリキュラム・マネジメントを推進し、児童生徒一人ひとりの確かな学びをつなぐ指導・支援の在り方を探る。
研究内容・方法
(1)「佐大附特システム」の改善
ア 本校のカリキュラム・マネジメントの推進に関する課題の整理を行う。
イ カリキュラム・マネジメントに係る各計画の様式等の見直し及び活用の状況をま
とめる。
ウ カリキュラム・マネジメント構造図、カリキュラム・マネジメントフロー図の見
直しを行う。
(2) 「学習内容表」の作成と活用
ア 「学習内容表」の作成に取り組む。
イ 「学習内容表」の活用の状況をまとめる。
ウ 「学習内容表」の作成後や活用後にアンケートを取り分析する。
(3) 確かな学びをつなぐ授業実践
ア 「佐大附特システム」に基づいた学部別授業研究を各年次で行う。
イ 授業研究から明らかになった「児童生徒の確かな学びをつなぐポイント」をまと
める。
研究報告
(1)「佐大附特システム」の改善
ア 本校のカリキュラム・マネジメントの推進に関する課題の整理を行う。
本校のカリキュラム・マネジメントの推進に関して以下のように課題をまとめられた。
・カリキュラム・マネジメントに係る各計画の役割や意義の明確化と記入しやすい様
式の改善
・作成した各計画について教師間で活用しやすいシステムの構築
・カリキュラム・マネジメント構造図やフロー図の見直し
・適切な指導内容の選定や目標設定をしやすくするためのツール作成
・育成を目指す資質・能力の3つの柱や評価の観点、主体的・対話的で深い学びの視
点での授業改善についてのより深い理解
イ カリキュラム・マネジメントに係る各計画の様式等の見直し及び活用の状況をま
とめる。
図のように、各計画の様式等の改訂を行った。
以上のようなカリキュラム・マネジメントに係る各計画の活用や教師間の共有を図るために、年間指導計画の掲示や、児童生徒一人ひとりに作成した学びの履歴ファイルと学部ごとに単元計画を保存する学部のファイルを準備した。また、年間指導計画のフォルダと学部のフォルダを準備し、サーバーで整理・管理し、教師間で情報共有ができるようにした。
ウ カリキュラム・マネジメント構造図、カリキュラム・マネジメントフロー図の見 直しを行う。
カリキュラム・マネジメント構造図の見直しに、①グループ協議(要素カードを広用紙に貼り、相互の関係性を矢印やベン図により図示する)②プレゼン(作成した各グループ案を全体で発表)③改訂案の作成(新構造図を、研究部会や研究推進委員会で検討する)という手順で取り組んだ。
カリキュラム・マネジメントフロー図については、担任や授業者が、「いつ」「何をする」が明確になるように、教務部と検討を重ねて進めていった。
(2) 「学習内容表」の作成と活用
ア 「学習内容表」の作成に取り組む。
「学習内容表」とは、学習指導要領の各教科に記述された目標や内容を解釈し、内容を系統的に配列して一覧表として示したものである。作成目的は以下の通りである。
・教師が協働して学習指導要領で示される各教科等の目標と内容を読み込み、解釈を
深めながら系統的に配列する作業を通して、各教科等の見方・考え方に習熟する。
・作成した学習内容表を、個人の目標設定や授業作りを行う際に活用し、その根拠と
する。
・学習内容表の文言を教師間の共通言語とすることで、児童生徒の実態や目標を共有
しやすくし、授業内のチームティーチングをより有効化する。
・児童生徒の各教科等における実態把握の一助とし、次に取り組むべき内容の選定に
生かす。
作成にあたっては、小学部「生活」の内容について、「児童生徒の実態に応じて一人ひとりに適切な目標を設定する際に考える基盤としたい」と考え、図のようなつながりと項目の振り分けで編成を行い、作成することとした。
教師を小学部・中学部・高等部の縦割りグループで構成し、グループ内で、学習指導要領に示された各教科の目標や内容の読み込み、内容の配置と内容表記について検討した上で「学習内容表(案)」の作成に取り組んだ。
イ 「学習内容表」の活用の状況をまとめる。
完成した学習内容表は「教師用の学習内容表のファイル」と児童生徒の「学びの履歴ファイル」とした。
「教師用の学習内容表のファイル」
年間指導計画、単元計画の作成(何を学ぶか、どう学ぶか)
「学びの履歴ファイル」
年間指導計画、単元計画の作成(何を学ぶか、どう学ぶか
ウ 「学習内容表」の作成後や活用後にアンケートを取り分析する。
まず、1年次アンケートの「『学習内容表』を今後、どのような取り組みに生かしていきたいか」の質問に対しては、単元計画作成や個別の指導計画の目標設定を上げる教師が多く、児童生徒の目標設定に活用していきたいとの考えが伺えた。作成の取組に対しての気付き感想等の自由記述では、「各教科の段階のつながりや、教科の見方・考え方を学ぶきっかけとなった。」という意見が多かった。と、同時に「教科の指導内容の習得や教科の系統性のみに着目した授業作りとなってしまうと、知的障害のある児童生徒の学び方に配慮し、現在や将来の生きる力の育成を図るという視点が弱くなってしまうのではないか。」という意見も上がった。
2年次の、作成の取組に対しての気付き感想等の自由記述では、「各教科グループで『学習内容表』作成のコンセプトに違いがある。統一した視点での見直しと改善が必要である。」や「小学部生活科の項目の、職業や家庭、理科、社会等への振り分けが妥当であったかの検証が必要である。」との意見が上がった。
また、「学習内容表」の活用に関する項目については、「児童生徒が教科のその内容を習得できたかどうかを、教師が適切に判断することが難しい。」という問題点や、データ化やリスト化の必要性が上げられた。
(3) 確かな学びをつなぐ授業実践
ア 「佐大附特システム」に基づいた学部別授業研究を各年次で行う。
各学部の取組として掲載している。
イ 授業研究から明らかになった「児童生徒の確かな学びをつなぐポイント」をまと
める。
1年次の授業研究協議会を行った後、「単元レベルで学びをつないでいるところ」「授業レベルで学びをつないでいるところ」「さらに学びがつながるための工夫点」の3項目で、意見を出し合い、「児童生徒の確かな学びをつなぐポイント」を作成し、2年次にも見直しを行った。
「児童生徒の確かな学びをつないでいる姿」を、「確実に資質・能力を身に付ける児童生徒」「身に付けた資質・能力を学校で生かす児童生徒」「資質・能力をさらにのばす児童生徒」「資質・能力を地域生活や将来の生活で活かす児童生徒」の4つで整理し、その姿を実現するための「教師の意識すべきポイント」を児童生徒の姿の周りに配置して、「児童生徒の確かな学びをつなぐポイント」図を作成した。
研究の成果と課題
第16期研究の成果と課題は以下のように整理することができた。